タンゴ・ダンスには様々な種類(※1)があり、日本ではステージタンゴの主張の強いアクロバティックなダンスがテレビやショーでよく知られています。しかし、激しく官能的なステージタンゴは特別に舞台のために作られたもの。トラディショナル・アルゼンチンタンゴ・ダンススクールがお教えするタンゴは、アルゼンチンタンゴのなかでもっともエレガントで癒しの効果がある「サロンタンゴ」。このページではそのサロンタンゴについて詳しくご紹介します。 |
アルゼンチンタンゴ・ダンスは大きく分けてサロンタンゴ、ステージタンゴというふたつの部類に分けられ、本場ブエノスアイレスで「タンゴを踊る、習う」という場合、そのほとんどがサロンタンゴを指しています。それは、このサロンタンゴがタンゴダンスのなかでも特に「人との出会い」「絆・つながり」を目的にした大人のエンターテインメントで、洗練され遊び心のある癒しのダンスだからなのです。
(タンゴの癒しのメカニズムについでは、タンゴセラピーのページでご案内しています。) |
まず、サロンタンゴの踊り方をご紹介します。サロンタンゴでは、男性がリードし女性がそれをフォロー、すなわち男性の動きを女性が感じ取り動きます。このとき、男性が強引に女性を動かしたりすることはありません。「こちらに動いてください」という男性の意志を女性が感じて、女性自身が動く。この連続がダンスになっていきます。 |
では、どうやってその意志を感じ取るのでしょうか。 |
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サロンタンゴでは、男女は片方の掌を組み合わせ、もう一方の腕で抱擁している形をとります。このとき女性は、ふんわりと男性の腕に包まれている状態。互いの腕や肩、上半身や額の一部、掌が触れていますが、その触れた部分に動と静のエネルギーを伝わせ、小さく、優しく、合図を送るのです。不思議なことに人間の体はほんの少し背中に力を感じると自然に脚を前に出し、体の周囲に少し空間ができればそちらに向かって動きます。サロンタンゴはこうした人間の特性を使 い、男性の優しいリードに女性の身体がシンクロして移動し、遊び心ある飾りのステップを織り交ぜながら踊る即興のダンスなのです。 |
男性は女性が気持ち良く快適に踊れるように配慮しながら動く方向やステップを決め、女性は男性からのサインを身体のコンタクトを通じて受け取って動く。そうして一連の動きを作り上げていくと、言葉を使わず身体で会話をしているような感覚がもたらされます。このためサロンタンゴはよく「言葉を使わないコミュニケーション」と表現されます。ダンスでコミュニケートできるわけですから、サロンタンゴはひとつの言語のようなもの。相手がどの言語で話す人であれ、一曲一緒に踊るだけで弾む会話を楽しんだような奥深いつながりが持てるのです。
日本国内でもそうですが、ヨーロッパやアメリカの各都市、アジアの大都市では、必ず街のどこかでサロンタンゴのパーティー「ミロンガ」が開催されています。 旅先の世界の都市で身だしなみを整えてミロンガを訪ね、異国の方たちとタンゴを踊って遊ぶ。観光や買い物だけの旅行に物足りなさを感じる現代の大人達にとって、このダンスの持つ不思議な力は大きな魅力となっています。
サロンタンゴを踊るパーティーのことを「ミロンガ」と呼びますが、ここは出会いと繋がりを求める社交の場。このミロンガでは、紳士・淑女として振る舞うことが第一条件です。タンゴが生まれたアルゼンチンという国は南米にありながらヨーロッパからの移民で成り立ち、白人人口が97%を占める国。もちろん、その社交にもヨーロッパ的な方法が用いられ、日常の様々な場面でも男性は女性をエスコートし、女性は気品を持って応対します。ミロンガでも、そしてもちろんサロンタンゴの踊りの中でもこうした礼儀が求められています。これが、タンゴが「大人の遊び」と言われる由縁です。
しかし「礼儀」や「気品」といっても、アルゼンチンが堅苦しい国でタンゴが堅苦しい踊りかというと、まったくそんなことはありません。ヨーロッパ的な社会的洗練を重視するものの、アルゼンチンは2010年に建国200周年を迎えたばかりの若い国。未開の大地を切り開き、文化を輸入し、独自の在り方を作り上げたのも 日本やヨーロッパなどに比べれば、つい最近の出来事。社会全体に自由な空気があり、突き抜ける空の下にエネルギーが渦巻いている土地、それがアルゼンチンです。そこに暮らす人々、演奏される音楽、そして踊られるダンスも野性を隠し持ち、喜怒哀楽やユーモアに溢れた個性的な性格をもちあわせます。その個性豊かな人たちが見事に「ハレとケ」を使い分け、ハレの場面で他人と時間を共有し奥深い味わいのあるダンスを楽しむ、それがサロンタンゴ本来の姿だと言えるでしょう
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